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  • 執筆者の写真Aniwo Info

【Agritech 2023 開催前インタビュー #1】アグリテック・エコシステムのキーマンに聞く「イスラエルがアグリテック先進国になりえた理由」

2023年10月、テルアビブにてグローバル農業サミット「Agritech 2023」が開催



 2023年10月17日から19日にかけて、イスラエル最大の商業都市であるテルアビブで、3年に1度の世界農業・水技術サミットAgritech 2023が開催される。本サミットは、「ディスラプティブな時代における食糧安全保障」に焦点を当てており、7000平方メートルに及ぶ会場にて、150社のグローバル企業やスタートアップ企業が革新的な技術やソリューションを紹介し、国内外より1万人以上が参加する国際展示会である。


 本サミットの日本メディアパートナーである弊社Aniwoが、開催に先立ち本サミットを主催する「Agritech Israel」のCEOであるRafi Nevo(ラフィ・ネヴォ)氏に、イスラエルのアグリテック・エコシステムの強みと本サミットの見どころを取材した内容をお届けする。


なぜ、イスラエルはアグリテック先進国になりえたのか?


 「アグリテック・エコシステムにおけるイスラエルの独自性は、イスラエルが様々な気候帯の交差点に位置することを逆手に、農業に関するあらゆる課題に対し解決策を提供できる点にあります。」と語るのは、農業・食糧・水技術におけるイノベーションプラットフォームを提供する『Agritech Israel』CEOのラフィ氏だ。


 イスラエルは長い歴史において、水不足という極めて深刻な課題を常に抱えていたことから、イスラエルの人々にとって、アグリテック分野の進化は文字通り生き残りをかけた課題であった。この課題に対し、革新的な方法で水資源を倍増させ、海水と廃水を農業と家庭のライフラインへと変えていき、亜熱帯地域と砂漠地域両方の需要に対応してきた。では、実際にイスラエルのアグリテックは、農業に対しどのような技術を活用し変革を起こしたのか。


 「イスラエルのアグリテックの真髄は、より少ない要素で多くの変革を起こす技術であり、最も有名な偉業の一つは、「画期的な点滴灌漑システム」である。」(ラフィ氏)

 点滴灌漑システムとは、最小限の水で作物を繁茂させ、植物が必要とするものだけを効率的に供給することを可能とする技術である。さらに、土壌の状態を感知し、水や養分の供給を調整するデジタルツールを開発するなど、最先端のテクノロジーを農業の根幹に織り込んでいるのだ。

画像:精密灌水システムを扱うイスラエル発アグリテック企業Netafimが提供する、精密灌漑用オペレーティングシステム「GrowSphere™」(Netafim社 HPより)



迫り来る食糧危機に対応するため、フードテック分野も早くから推進


 また、国土や自然条件に恵まれていないという点では当然食糧危機に対応する必要があるイスラエルは、アグリテックとともに、フードテック分野の開発にも強みを持っており、「フードテックは、食糧安全保障を確保するための重要な架け橋である。」とラフィ氏は述べる。


 ラフィ氏によると、単に食糧不足を改善することだけではなく、食物の本質を強化し、より栄養価が高く機能的なものにすることを重視しており、例えば、ひよこ豆や昆虫から代替タンパク質を開拓するなどし、持続可能な栄養補給の方法に革命を起こしているという。「Agritech 2023」サミットにおいても、フードテックの有力スタートアップが多数参加する予定だ。

(Agritech 2023)


 国土の面積も気候条件も異なり、イスラエルのように深刻な水資源の課題を抱えてはない日本だが、イスラエル発アグリテックソリューションとの連携可能性はあるのだろうか。ラフィ氏に対し、イスラエルのアグリテックが世界に与える影響について質問したところ、ラフィ氏は日本が有力なパートナーになりうる可能性を秘めていると述べた。


 「アグリテックにおける注目領域の一つである垂直農業は、都市の中心部に新鮮な農産物をもたらすゲームチェンジャーになる可能性を秘めており、この技術は大都市圏への人口増加に伴う食糧不足危機への対応策として非常に重要であると考えています。また、藻類から天然色素を抽出する技術も、日本の食文化と共鳴するものであると期待している。」とし、アグリテックにおいて、今後日本とイスラエル間のパートナー関係が進展する可能性があることを示唆した。


「Agrietch 2023」in Israel


 イスラエルは、イノベーション政策についての中心的な役割を担っているイスラエル・イノベーション庁をはじめ、アクセラレーター、インキュベーターなどイノベーション創出のための支援体制が充実しているが、それはアグリテック分野においても同様だ。

 

 イスラエルのアグリテックエコシステムの重要人物であるラフィ氏に対し今最も注視している領域について伺ったところ、真っ先にデザーテックを挙げた。


 「砂漠の太陽エネルギーや風力エネルギーを利用しようとするテクノロジー、すなわち "デザーテック "の躍進は非常にエキサイティングです。刻一刻と砂漠化が広がる中、その課題に立ち向かうことは私たちの義務であると考えており、その先頭に立って進めていく態勢を整えています。」(ラフィ氏)



 そして今年10月、アグリテック先進国であるイスラエルにおいて、アグリテックに特化したビッグカンファレンス第21回「Agrietch 2023」が開催される。


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 本サミットには、世界的企業のリーダーや経営者、政府の閣僚や国会議員、NGOの上級理事、学界のメンバーなどが世界各国から集まり、120社の大手グローバル企業と50社のアグリテック、アクアテック、フードテックの新興企業が最新の農業、水、食品技術やソリューションを展示する最先端の展示会である。


 さらに、世界的に著名な講演者100名を招いた専門会議シリーズや、ネットワーキング及びジョイントベンチャー促進のためのB2Bプラットフォームが提供され、イスラエルの農業・水・食品技術の拠点やイノベーション・センターを訪問するエクスカーション・プログラムも用意されているという。主催者のラフィ氏も、「本サミットは、世界中の頭脳が集結し、新たなソリューションが生まれ、グローバルパートナーシップが花開くプラットフォームであり、コラボレーションの結節点として機能することを期待しています。」とコメントを寄せている。

(Agritech partners, exhibitors, and content contributors)


 「宇宙探査がマイクロ波の発明に繋がったように、新しい分野の研究は多くの新技術を前進させ、予期せぬ技術的飛躍をもたらします。大麻産業の飛躍もまた、アグリテックに対しても変革をもたらしており、精密農業と作物保護は、大麻産業の発展を通し農業のあり方を再構築しています。農業と再生可能エネルギーの融合も増加傾向にあります。広大な畑を太陽光発電パネルで覆い、作物栽培と持続可能なエネルギー生成を結びつけることを想定しています。」(ラフィ氏)


 ラフィ氏の言葉を借りれば、イスラエルの農業技術に対する挑戦は、絶え間ないイノベーションの物語であり、自然の課題を克服するための探求であり、来るべき世代への糧の約束であのだろう。


 次回は、Agritech 2023に参加予定の、植物性食肉領域で注目のイスラエル発スタートアップ「Redefine Meat」CTOへのインタビューを公開します。ご期待ください!



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