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イスラエルスタートアップが創る、モビリティの未来を読み解く — Pitch Tokyo #6 (2018–2019) Mobility Event Report


今年6回目となるPitch TokyoはWeWorkで開催された。WeWork創業者のアダム・ニューマン氏はイスラエル出身。

イノベーションの震源地として名高いイスラエルから注目企業を紹介するAniwoの月例イベント、Pitch Tokyo。今月のテーマは自動運転が注目を集めるモビリティだ。ここではWeWorkアークヒルズサウスで開催されたイベントの様子をお伝えする。



モビリティ領域はコネクテッドカー/自動運転車の技術発展に伴い近年急速に注目を集めている。

イスラエルでも本領域においては車の位置情報を活用するGettAnagogのような企業や、コンピュータービジョン技術を車内で実現するBrodmann17Hailoといった企業が頻繁にメディアで取り上げられている。

大手企業も積極的に投資を行っており、2016年にはUberが自動運転トラックを開発するイスラエルのスタートアップ企業Ottoを、FordはAI・機械学習技術を持つSAIPSをそれぞれ買収した。

また2017年にはIntelが画像認識用半導体技術を持つMobileyeを15.3B(約1兆7000億円)で買収し、大きな話題となった。IntelとMobileyeは自動運転レベル4(高度運転自動化)の実証実験に取り組んでおり、この分野におけるイスラエルの先進性が改めて証明された格好だ。

今後数年で更に発展が見込まれている領域である。


本イベントでは、WeWorkコミュニティアソシエイト 遠藤様より開会のお言葉を賜った後、最初のメインコンテンツである深尾三四郎氏 (浜銀総合研究所調査部産業調査グループ主任研究員)によるモビリティ業界の解説に移行した。



深尾 三四郎氏 / 浜銀総合研究所調査部産業調査グループ主任研究員

深尾 三四郎 氏

1981年東京・目黒生まれ。経団連奨学生として麻布高校から英ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)アトランティック校(Atlantic College)へ留学。同校卒業後、独フォルクスワーゲンのヴォルフスブルグ本社でインターンシップを行い、自動車産業に関心を持つ。

03年英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)を卒業、二酸化炭素排出権取引と持続可能な開発(Sustainable development)を学び、環境政策・経済学士(BSc)を取得。同年野村證券に入社、金融研究所に配属。05年から英HSBCでの自動車部品セクターのアナリストを経て、米国及び香港のヘッジファンドで日本・韓国・台湾株のシニアアナリスト。機関投資家としてスマートフォン、液晶テレビ、太陽電池の進化を目の当たりにした。14年に浜銀総合研究所に入社。専門はマクロマーケティングとファンダメンタルズ分析。


まず深尾氏からは、モビリティとは自動車のモノとしてではなく、エコシステムのことである前置きをしながら「CASE」時代に突入することが述べられた。

CASEとは、 “Connectivity”, “Autonomy”, “Sharing”, “Electrification”の頭文字をとった造語である。

このエコシステムは世界における大きく3つのメガトレンドが起因している。デジタル「社会」への変化、脱炭素・都市化という「時代」の変化、ミレニアル世代の台頭という「世代」の変化が根底として存在し、都市におけるヒト・モノ・データを運ぶサービスとして「MaaS (Mobility as a Service)」が発展し、より大きなエコシステムを形成していくことが解説された。


詳しくは深尾氏の著書である”モビリティ2.0 「スマホ化する自動車」の未来を読み解く”をご覧いただくことを推奨する。講演では伝わりきらなかった中国やインド・スイスなどの国家をあげて取り組むモビリティ最新動向などが記述されており、より一層理解が深まるだろう。



続いてイスラエルスタートアップのピッチへ。

今回登壇したのはモビリティ向けの最先端ソリューションを開発するRegulus / GoTo / NoTrafficの3社だ。


Regulus Cyber Security社 Chief Business Intelligence OfficerのJana Wagner氏

まず最初はRegulus

同社はPyramid™という自動運転車、ドローンなどに搭載される位置情報センサーのセキュリティシステムを構築する。

自動運転を実現する上で不可欠なのが衛星測位システム(GNSS/GPS)による位置情報把握であるが、末端のレシーバーは現状セキュリティが脆弱であり容易にハッキングされてしまうため、自動車事故を引き起こすサイバーテロの温床となりかねない。

この課題に対して、同社はナビゲーションシステムへの不正アクセスや電波妨害を事前に検出し、脅威を排除するシステムを構築している。


同社は2019年1月16日〜18日に日本で開催される展覧会、オートモーティブワールドに出展する予定である。同社ソリューションにご興味のある方は是非足を運ばれてはいかがだろうか。


GoToは2018年10月に開催されたパリ・モーターショーのStartup Awards, Sustainable Mobility部門を受賞した。

続いてはBtoCのカーシェアビジネスのサポートを行うGoToのピッチ。

同社はカーシェアリングに必要なアプリ及びバックオフィス業務を支援するトータルソリューションを提供する。

ホワイトレーベルでSDKを提供することでカーシェアリングアプリの低コスト/スピーディーな構築を可能にする。

既存機能の拡張にも注力しており、異なるステーション間での貸し借りを可能にするシステムの構築を援助している。

またセキュリティ面では、遠隔での自動車のモニタリング及び操作機能を追加することで盗難や犯罪行為の抑制を実現している。

同社のソリューションはマルタ共和国の公式カーシェアリングビジネスに採用されており、世界的に注目されている企業である。


NoTrafficは現在シードラウンド、これまでに$3.35M資金調達を行なっている。

最後を飾るのは、2018年イスラエルベストスタートアップ選出にも選出された注目の交通インフラ企業、NoTraffic

同社は交差点にCPUを搭載したセンサーを設置し、バス/トラック/歩行者/自転車などを検出・分類することで、AIアルゴリズムとリアルタイムのデータを活用し交差点の交通を最適化するソリューションを提供する。

またクラウドベースのコントロール・センターが各交差点をつなぐことも可能で、各交差点が連携して渋滞を緩和することが可能になる。

このシステムには優先車線や優先車種など、街ごとの交通ポリシーを反映させることも可能であり、また事故や逆走車両など、道路上で非常事態が起きた際にも管理者にアラートが伝達される。

これにより管理者は道路状況の変化に即時に対応した交通ポリシーを決定することが可能になり、その効果は渋滞の40%を解消するとも言われている。

イスラエルでは既に実装済で、米国でもオハイオやアリゾナなど、複数の場所で有償のパイロット・プロジェクトが立ち上がっている。



続いては特別講演として、Herzog Fox & Neeman Law Officeのギラッド氏に登壇いただいた。


ギラッド・マジェロウィッツ氏 / Herzog Fox & Neeman Law Office 日本事業責任者

ギラッド氏はイスラエル最大の法律事務所Herzog Fox & Neeman Law Office(以下HFN)のCommercial部門のパートナーで、日本事業責任者を兼務している。

日系企業のイスラエルスタートアップ、エコシステムへの注目により現地への進出も増えてきているので、拠点設立の際にはご相談いただければ、とプロフェッショナルの心強いイスラエル進出サポートを示した。



会場のボルテージも高まる中、最終コンテンツのパネルディスカッションへ。



ご講演いただいた深尾氏と、ゲストスピーカーのお二方に加え、当社SVPの松山を交えて「Mobilityのビジネス展開の課題」をテーマに熱い議論が交わされた。

登壇者プロフィールは以下の通り。


< パネリスト >

  • 深尾 三四郎氏 / 浜銀総合研究所調査部産業調査グループ主任研究員

  • 田中 真人氏 / Herzog Fox & Neeman Law Office 外国法弁護士

  • 中島 慶氏 / 本田技研工業株式会社 ビジネス開発統括部 戦略課 技術主任


<モデレーター>

  • 松山 英嗣 / Aniwo, Senior Vice President of Business Development

正面着席左から、深尾氏、田中氏、中島氏

(以下敬称略)


グローバルに見る日本企業の課題は?また今後の展望は?


深尾:自分が考える課題は二つあって、一つ目はトップマネジメントのITの理解度。

ベルリンのVolkswagenなども日本と同様の課題は抱えているのだが、トップマネジメントがデジタルのインパクトを理解していないと、決済が落ちないのでプロジェクトが前に進まない。

なのでまずはトップマネジメントのデジタルの理解を深めるのが第1ステップ。


もう一つがスタートアップとの協業、および協業先を見分ける目利き力。

80~90%のスタートアップは失敗するので、有望なスタートアップに目をつけて協力関係を築く必要性がある。

そのためには国際的にアンテナを張って、トレンドに乗った技術や企業を見つけようとする試みが必要。


中島 慶氏 / 本田技研工業株式会社 ビジネス開発統括部 戦略課 技術主任

中島:新規プロジェクトの社会実装の場が少ない。

深尾さんのお話にもあったようにトップマネジメントを説得する必要があるが、それには実際に結果を出して証明するのがスムーズ。

中国のように、スタートアップにそのような実証の場を提供する環境づくりが日本で必要とされていると思う。




田中 真人氏 / Herzog Fox & Neeman Law Office 外国法弁護士

田中:積極的な世界単位への投資。

イスラエルという観点で言うと、出張ベースから子会社設立まで様々な目的で日本企業からの訪問者は増えているものの、まだまだ現地進出にはコンサバティブな企業が多い。投資は子会社を立てなくても可能であり、規制面でも厳しくない。

実際に実行のロードマップとして投資先と出会う方法としては、現地に人を派遣してコネクションを作る、もしくは現地の人を雇うなどの方法がある。

後者に関しては損保ジャパンが取り組んでおり、現地にラボを作って、各スペシャリストを雇っているので意思決定がスムーズに進んでいるという好例もある。

是非後を追う大企業が増えてきて欲しい。


深尾:投資の話をすると、近年現地のスタートアップはCVCよりもVCを好む傾向がある。

CVCだと既存事業とのシナジー前提の投資話になりがちなため、投資元企業の要望が色濃く反映される傾向があり、近年はこの傾向が忌避されつつある。

スタートアップの側も投資元の選別を始めているので、シナジー無視の投資の方が意外と現地スタートアップ関心を集めるかもしれない。


注目している技術・スタートアップは?


CVCやアクセラレーターを有する本田技研工業の中島氏(写真右)からは、モビリティの当事者として貴重な意見が述べられた。

中島:今年の9月に本田技研工業のアクセラレータプログラムから、優秀賞として出てきたのがモビリティとロボティクスの融合というテーマの企業。

職業柄この領域のスタートアップは注視している。


田中:モビリティではなくリーガルテックになってしまうが、契約書のレビューが10秒で完了するソフトウェアを開発しているスタートアップがある。従来は従業員二人のダブルチェックで2.5h×2で5時間かかっていた作業時間が大幅に短縮される。

弁護士の仕事が減ることにはなるが、我々は若いファームであるのでマニュアルでしかできないとことと、単純化できるところをしっかり分別してこの分野の技術導入を促進していきたいと思う。


深尾氏は注目領域として「VR/AR」と「フランス」という二つを挙げた。

深尾:大きな売上をあげる気配のあるスタートアップと言う側面でいうと、VR/AR系。レベル4の自動運転のUX向上に刺さる技術がかなり手堅く伸びてくると思う。

あとは自動車関連でいうと、近年フランス語圏でCivil Engineerning(土木工学)を習得したスタートアップワーカーが多い。

なのでフランス語の協業先だったり、フランス語ページのある企業は結構伸びそうな雰囲気がある。



次回のAniwo主催イベントは日本最大級ブロックチェーンカンファレンス、DappSummitが12月18日にマンダリンオリエンタル東京で開催する。

業界最先端を走るSirin LabsOrbsといったイスラエルDapp企業から日系大手企業、そして豪華スピーカーらをお招きする本イベントは必見である。

尚チケットはホームページからお申し込みいただける。



そして次回のPitch Tokyoは12月20日WeWork Nogizakaにて「ブレインテック」をテーマに開催を予定している。

こちらのリンクから詳細をご覧いただけるので、2018年最後のPitch Tokyoにぜひ足を運んでいただきたい。


最新情報はAniwoアカウントより随時発信中。


Aniwoのイベントから更なるイノベーションが創出されることを祈っている。

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文責:Aniwo 服部

編集:Aniwo 黒須

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