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先端IT活用事例から読み解くイスラエルと日本の現状 — Pitch Tokyo #5 (2018–2019) AI / Cyber Security Event Report


イノベーション国家・イスラエルのスペシャリスト、Aniwoが主催するPitch Tokyo。今月のテーマはAI / サイバーセキュリティ 。東陽テクニカ様のご協力を賜り、月曜日にも関わらず多くの方々に足を運んでいただいたイベントの様子をお伝えする。



AI / サイバーセキュリティはイスラエルが世界的な強みを持つ分野のうちの一つである。

AI領域では過去5年間で毎年平均140社が誕生し、現在では950社以上がAIテクノロジーの運用や開発を手掛けている。

イスラエルのAIスタートアップが2017年に調達した資金は$2B (約2250億円) と前年から70%増加し、今年は既に$1.5Bに達しているという。

また、サイバーセキュリティ産業は同国の軍事システムから発展した輸出産業の1つで、世界的にはアメリカに次いで2位の規模を誇る。

また、イスラエル政府は2018年8月にサイバーセキュリティ産業の育成を目指して、9000万シェケル(約26億円)を投資することを明らかにしたこともあり、今後もさらなる発展が見込まれている。


東陽テクニカ櫻井氏による、基調講演

本イベントでは初めに、日本のセキュリティ分野のトップ企業である東陽テクニカ様から、本イベントの基調講演を賜った。

2020年のオリンピックを控え今後ますますグローバル化していく中で、日本のサイバーセキュリティ分野においての強化は必須とのお言葉をいただいた。






続いてイスラエルの最先端企業紹介へ。今回の企業紹介Pitchに登壇したのは当該領域で注目を集める Optimove / Hailo / Biocatchの3社だ。



Optimove社 CEO、Pini Yakuel氏による技術紹介

最初に登壇したOptimoveは、ブランドー顧客間のコミュニケーションをEIの観点から劇的に効率化するマーケティングハブを開発する企業。

EIとは心の知能を指し、他人の考えを推し測る能力を指す。顧客の心情を把握する重要性が高いマーケティング領域において近年注目されている指標である。

同社はtoCブランドが持つ顧客のデータに基づき、顧客とEIの高いコミュニケーションを実現する。同社のハブはデータサイエンスに基づいたパーソナライゼーションにより、ブランドが持つ顧客のイメージを常にアップデートし、現実の顧客に近いペルソナ構築を可能にする。

これにより顧客の反応に敏感で正確なリアクション及び、顧客ロイヤリティのさらなる向上を援助する。ブランドが直接顧客に話しかけ、親交を深めていける未来は、すぐそこにあるのかもしれない。



シリーズAにて$12.5Mの資金調達を実施したHailo社

続いて登壇したHailoは、エッジデバイスで深層学習を実現するプロセッサーを開発する企業。

同社の強みはハードウェアとソフトウェアを繋げるシステムを深層学習用に再設計した、現在特許申請中のアーキテクチャーだ。

同社のプロセッサーは非常にコンパクトで消費ワット数も小さいが、解像度や処理速度、正確性を落とすことなく、データセンターのCPUと同等の機能を発揮するなど、深層学習プログラムを処理する上で世界に類を見ない効率性を実現している。

このプロセッサーの登場により、例えばコンピュータービジョンの分野において、高解像度の映像撮影/映像認識/音声認識など、AIによって可能になる最先端のテクノロジーがウェアラブルデバイスから自動運転車まで幅広い機器で実装できる。



Biocatch社の詳細動画は右記リンクからご覧頂ける

最後に登壇したのはBioCatch。同社はサイバー犯罪に加担するユーザーの特徴を解析するセキュリティソフトを開発。

ネット上の取引用ウェブサイト向けに一般ユーザーの動きを解析し、詐欺やボットによる取引を防ぐサービスを提供している。

同社はウェブサイトの内の遷移履歴だけではなく、滞在時間/カーソルの移動経路/スクロール速度/クリック回数などから各ユーザーのプロフィールを分析する。

それにより一般ユーザーの行動に合わせたウェブサイトづくりを可能にするのは勿論、各ユーザーの生体認証の実行や、一般ユーザーと異なる動きをするボットや犯罪者を特定し、サイバー犯罪の発生を未然に防ぐ。


続いて日本のベンチャー/セキュリティ分野に造詣の深いゲストの方々をお招きしたディスカッションへ。今回お越し頂いた方々のプロフィールは以下の通り。


< パネリスト >

  • 大森 充氏 / 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネージャー

  • 櫻井 俊郎氏 / 株式会社東陽テクニカ セキュリティ&ラボカンパニー カンパニープレジデント

  • 松山 英嗣 / Aniwo, VP Business Development


< モデレーター >

  • 松田 信之氏 / 株式会社三菱総合研究所 経営イノベーション本部 主任研究員


左からAniwo 松山、東陽テクニカ 櫻井氏、日本総合研究所 大森氏、三菱総合研究所 松田氏

(以下敬称略)



松田まず、今回のトピックでもあるサイバーセキュリティについてお話を聞いていきたい。昔から話題に上りやすいテーマではあるが、ここ数年の主な変化は何か?


櫻井:おっしゃる通り古くからあるテーマではある。

実際にサイバー脅威のランキング上では古くからある標的型攻撃が未だにトップであるなど、脅威にあまり目新しさはない。むしろ変化は防ぐ手法の方にあり、Firewall、sandeboxなど入口でデータを集めるものや、他にも出口でデータを分析するものなど、扱うデータ量自体が多くなっているのでAIが活用され始めている。

あとは生体認証が最近の日本では盛んである。この分野ではBioCatchのようにユーザーに負担をかけない生体認証セキュリティを用意しておくことが大事。


松田:なるほど。

色々なセキュリティソリューションが導入されているが、AIを使ったものと使っていないソフトウェアの違いはなんですか?


櫻井:大量のデータから抽出可能な点が圧倒的な強み。

弱みはサンプルデータの偏りに大きく左右されること。また、誤検出が起きた際にブラックボックスなので人間には理由がわからない点。

とはいえ、見なくてはいけない情報が膨大になっているので人間とバランスをとって進化していく必要はある。


松田昨今の日本でもAIベンチャーが増えているが、日本のベンチャーの課題は何か?


日本のAIベンチャーの課題はマネタイズと語る、日本総合研究所大森氏(写真右から2番目)

松山:AIと名乗っているだけのベンチャーも多い。日本とイスラエルの違いは業界の差もあると思える。

イスラエルはAI×コンピュータービジョンの組み合わせが多いので。


大森:マネタイズができていない。国内のAIベンチャーは基本的に赤字。

AIのアルゴリズムに競争優位を持っている企業が少ない。


松田:確かに今のAI業界は、どこの企業も手を出したいが手法が明確でないため迷走しているように思える。

特に、具体的な社会実装のイメージと技術にギャップがある。東陽テクニカさんのようにベンチャーを束ね、また世界と繋がりを持っていらっしゃる立場からみるとどうか。


櫻井:我々はベンチャーを束ねて欲しいと言われているわけではない。

脅威情報とログの相関など、特別尖ったテクノロジーを持っているわけではないが、情報量があると相関性が見えるのが強み。

また世界で課題ベースでベンチャーを探しても、日本のセキュリティが特殊であることから、なかなかピンポイントでは見つからない。営業を置いて、1on1で相談/交渉できているのが当社の強み。


松田イスラエル企業は技術ベースの企業が多そうで、あまり課題ベースではないように思えるが。


松山:だいたいイメージ通り。ただ、議論を重ねていくうちに日本企業側の課題、ニーズに技術が寄ってくることも多い。なので粘り強く話すことが大切。そこが現地でAniwoが発揮できる強みでもある。


松田:セキュリティ分野の初期交渉は困難も多いと思われるが、現地の会社の反応はどうか。


櫻井:現地に行くと、深謀遠慮なイスラエル人の怖さはあった。

プロダクトの中身もブラックボックスなので。ただ最近では、政府間のプロジェクトもあって、イスラエルの技術を安心して積極的に導入できるようになりつつあり、障壁はどんどん薄くなってきている。


松田:官公庁がキープレイヤーなのは納得。ただ官公庁を巻き込むにはある程度の導入事例が必要なのでは、と考えられるが。


大森:官公庁はトラックレコードが必要ではあるが、Forbesや500 Startups Japanなどの取り組みにより、地方自治体から始まる実績づくりが進んでいる。

そのため、いきなり政府というわけにはいかないが、地方でPOCできるような仕組みは整いつつある。


松田最後に皆様にメッセージを。


松山:ぜひ観光でもいいので一度イスラエルに。観光マップを見ても客観的に安全になってきている。本当にいい国なので、お待ちしております。


大森:世界においてスタートアップのエコシステムは多種多様。イスラエルのエグジットはM&Aが主力なので、大企業が発揮できるプレゼンスはあるのではないか。ドイツの例に倣って、相互に活用しあって拡大、進出して欲しい。


櫻井:先週深センに出張していたのだが、人口2,500万人、韓国、スペイン並みの都市で物流分野で優秀な人材が集まっており、エコシステムは世界で多様なのを実感した。

日本には日本のエコシステムがある。サイバーセキュリティ分野ででは、原材料輸入、製品構築、輸出というノックダウン式に日本は強みを持つ。つまり、世界から優れた技術を組み込んでより優れた製品を生んで行くのが日本スタイル。

ぜひ現地に行って見て世界のエコシステムの違いを感じれば、日本の役割や価値を理解できるのではないか。



このように、非常に熱いディスカッションが繰り広げられた。

最後には有識者、参加者を交えたネットワーキングの時間が設けられ、活発に名刺交換が行われていた。


Pitch Tokyoから新たなイノベーションが生まれること、次回も多くの方に足を運んでいただけることを祈っている。



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文責: Aniwo 服部

編集: Aniwo 黒須

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