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イスラエルのリアルテック企業から考える日本の現在地 — Pitch Tokyo #4 (2018–2019) BioTech/ Nano Tech/ Chemical Event Report

イスラエルと日本のイノベーションを繋ぐスタートアップ、Aniwoが主催するPitch Tokyo。今年度の第4回目は、リアルテックをテーマに開催された。

雨の中ではあったが、イスラエルからのゲストを含む多数の参加者にdock-Toranomonにご来場いただき、多くの交流が生まれたイベントとなった。ここでは活況を呈した企業紹介やディスカッションの様子を紹介したい。


虎ノ門にあるコワーキングスペース「dock-Toranomon」をお借りして開催した。


「リアルテック」とは、地球と人類の課題解決に資する研究開発型の革新的テクノロジーを指す言葉で、アメリカではDeep Techと呼ばれている。

エネルギーからIoTまで、多くの分野を含む幅広い概念だが、特に生物系、化学系、電子工学系の技術がこの領域で取り上げられることが多い。

イスラエルでもこの領域から成功を収めたスタートアップが多数出現している。


例えばイスラエル企業のStoreDotは、有機化合物を用いた電極技術により30秒以内にスマートフォンを充電できる電池を開発し注目を集めている。

Daimler AGやSamsung Venturesらも投資するこの企業は、累計$146Mの調達に成功している。


Aniwo VP松山によるイスラエルのエコシステム紹介の様子

今回の企業紹介Pitchに登壇したのはBioTech/ Nano Tech/ Chemicalの領域で注目を集める Mycolivia / Pensioner’s Pal / Pzartechの3社だ。



Mycolivia

Mycoliviaは薬用きのこのサプリメントを開発するバイオ企業で、適応症の治療分野で脚光を浴びている。

きのこから抽出される成分は健康改善に有用なことで有名で、ガンの治療にも使われる程である。

同社は製品開発をイスラエルの病院やハイファ大学と共同で行っており、人間の消化期間の働きを活性化させるサプリをはじめ、多くの画期的な製品を海外マーケットに輸出している。


共同創業者であるNachshol Cohen氏によるPitch動画が放送された。


Pensioner’s Pal

同社はデジタルプラットフォーム上で年金受給者とドッグオーナーのマッチングを行い、ペットの預かりや散歩の委託サービスを通じて、孤独感を感じることの無い健康的な社会の実現を目指す。

このサービスを通じてドッグオーナーはペットに愛情に溢れたお世話を、高齢者は孤独感のない活動的で健康な生活を実現できるという画期的なサービスである。


Vered Meyuhas氏によるPensioner’s Palの紹介。



Pzartech

なんとCEO自らがイベントを訪れ、Pitchを披露してくれた。

同社は機械のオペレーション管理システムを開発している企業で、ダウンタイム=故障等による非稼動時間の削減に取り組んでいる。メカニズムが複雑な飛行機や製油所では、故障箇所の特定に非常に時間がかかり、ダウンタイムの長期化により大きな機会損失が発生してしまうという問題がある。

Pzartechはオペレーティングシステム内に画像認識と機械学習を組み合わせた発見装置を搭載することで、故障箇所を可視化し、迅速な修復を実現している。


Pzartech社CEO Jeremie Brabet-Adonajlo氏による白熱したプレゼンが行われた。



イスラエルの現地企業CEOと直接交流できるとあって、Pitch後には多くの質問が飛び交った。

会場のボルテージも上がってきたところで、日本のリアルテックの第一線で活躍する方々とAniwo, CEO寺田によるディスカッションへと移行。

今回は以下の方々にご登壇いただいた。







< パネリスト >

  • 澤邉 岳彦氏 / 株式会社INCJ ベンチャー・グロース投資グループ(健康医療チーム)ディレクター

  • 岡本 敏氏氏 / 住友化学株式会社 技術・研究企画部 担当部長

  • 流郷 綾乃氏 / 株式会社ムスカ 代表取締役 暫定CEO

< モデレーター >

  • 松山 英嗣 / Aniwo, Vice President of Business Development


正面左から岡本氏、澤邉氏、流郷氏、寺田、松山

最初のお題は「バイオテック領域において日本は世界的にどのような立ち位置にあるか?」というもの。以下各登壇者の見解を紹介する。

(以下敬称略)


澤邊:日本の特徴として認識されているのは改善、ゴールに向けての研究。

世界的に定評がある一方で、突拍子も無いような、イノベーティブな研究ではアメリカが強い印象。

日本は領域横断的な幅広さよりも専門に特化した研究者が多いからではないでしょうか。


岡本:アジア、欧州、米国と回ってきたが、どこの研究者がどうという特定のイメージはないですね。

イスラエルと先進国の実装スピードの違いを感じることはありますが。


流郷:そうですね。

私も同じで、(※ムスカはイエバエを用いた間接的昆虫食事業を展開) 将来的なタンパク質の供給危機は世界的なものなので、昆虫産業は各国視点というよりもグローバル視点で考えていることが多い。

そのため国ごとの研究者へのイメージはないですね。


寺田:イスラエルではほぼ日本の存在感はないと思います。

製薬はヨーロッパ、オランダが強い印象はあるけれど。

ただイスラエル企業は市場規模があるとこには興味持つので、日本も協業先として候補に入りそうですね。なので日本企業は積極的に提携していただきたいなとは思います。


澤邊:研究者単位の話に戻すと、医療ニーズに先進国間で大きな差はなく競争相手は世界にいるので日本だから、アメリカだからと拘る必要はないと思います。


寺田:ムスカさんは45年間の研究成果を活用されているそうですが、一般的に日本では産学連携が進んでいないイメージがあります。どうしてうまくいったのでしょう?


流郷:私たちの研究はもともとソ連のマーズ計画から生まれたもので、火星への往復にかかる4年間分の食料を、ロケット内で再生産するための研究でした。

それを先々代の社長がソ連崩壊時に買い付けてきたので、イレギュラーな事例だと思います。


寺田:イスラエルもソ連崩壊時に多くの医療知識を持つ研究者たちが移民として流れてきてメリットを享受してきたという歴史があるので、その点で共通点を感じますね。



続いては「人材確保の重要性が増してきているが工夫している点は?」という質問。各社の取り組みについてご紹介いただいた。


イエバエを用いた技術を展開する、ムスカ暫定CEOの流郷氏

流郷:私は今暫定CEOを名乗っているんですが、これはCXOを公に募集しているという意味を込めて暫定を名乗っているんです。

グローバル展開できる人材の募集にいつでもオープンな姿勢を見せるという工夫をしています。


岡本:私たちの会社は近年 MITのILTプログラムに入って、色々なベンチャーや人材を見ています。

日本企業にとって人材の確保が難しくなっている点の一つとして、優秀な研究者を雇の給料が高騰していることがあると思います。新卒の研究者が自分の年収を超える例も聞いたことがありますし。その中で工夫として取り組んでいるのは色々なところに幅広く顔を出すことでしょうか。

ただ日本として完遂できていない面も多いように感じますね。例えば新たなチャネルから面接に繋げた人材が会社には向かない、っていう理由で落ちてしまう事例を聞くことが多くて。この辺りはイノベーティブな人材を取り逃がしがちな日系企業にとって一つのハードルですよね。


澤邊: 一人イノベーティブな人材を引っ張り込むと、類は友を呼ぶじゃないですけど、優秀な人材が集まるようになる。

その点投資先はリファラル制を活用しているといえます。あとは人との接点を多く持つようにしています。長年の年賀状のやり取りがきっかけになったこともあります。


ディスカッションの盛り上がりに伴い、来場者の方からも多くの質問をいただいたのでいくつか取り上げたい。



Q1:研究色の強い技術系の会社の中でも文系が活躍できる場所はあるか?


流郷:あまり理系文系の垣根は設けていないんですが、専門用語を噛み砕いて、世の中に発信していく人材は欲しいですね。

みんながみんな理系一辺倒だったら、新たなサービスの開発、展開には苦労しそうなので。


Q2:医療、製薬という文脈で、日本は規制が強そうなイメージ。世界と比較して日本の実状は?


澤邊:先ほど日米欧州の医療ニーズで大きく差異がないというお話をしましたが、それは規制面でもほぼ一緒ですね。

例えば電子カルテは日本だと同一病院内の使用に制限されているが、イスラエルでは病院間の利用が可能など、保険制度や個人情報保護の観点の違いから生まれる差異がありますが、純粋な医療面の法制度は大差ないです。


Q3:セルフメディケーションを日本は推しているが、医療用医薬品以外の分野で日本の強みがあるののでは?


澤邊:一概にそうは言えないと思います。というのも、その分野で重要なのは技術力よりもブランドであったり、参入期間であったりすることが往々にしてありますので。

マーケティング力の問題が絡んでくるとまた難しいですね。


このように、非常に熱いディスカッションが繰り広げられた。


最後には有識者、参加者を交えたネットワーキングの時間が設けられ、活発に名刺交換が行われていた。


Pitch Tokyoから新たなイノベーションが生まれること、次回も多くの方に足を運んでいただけることを祈っている。



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文責: Aniwo 服部

編集: Aniwo 黒須

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