• Aniwo Official

FinTechの示す未来— Pitch Tokyo #11 (2018–2019) FinTech Event Report



イスラエルのイノベーション最新動向をお伝えするAniwoの旗艦イベント、Pitch Tokyo。2019年3回目となる今回のテーマは、FinTech。今回はCreww株式会社様の運営する神谷町のコワーキングスペース『dock-Toranomon』をお借りし、開催したイベントのパネルディスカッションの様子をお伝えする。


イベントページ:https://pt11fintech2019.peatix.com/



近年、新聞やインターネットなど各種メディアを通して「FinTech」という言葉が登場する機会が増えており、金融に限らず多様な業界でフィンテックについて話題に上ることも多くなっている。

「FinTech」とは、金融を意味する「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語である。

古くは、金融機関の保有する勘定系システムや営業店システムといった伝統的な情報システムについてフィンテックと称する例も見られたが、このところは用法に変化が認められ、概ね「ICTを駆使した革新的(innovative)、あるいは破壊的(disruptive)な金融商品・サービスの潮流」といったくらいの意味で利用されている。

※出典=富士通総研



イベントでは日本のFinTech業界の有識者とイスラエルのベンチャーキャピタリストを招待し、パネルディスカッションを行った。


パネリストは以下の方々で、モデレーターはAniwo, SVP of Biz Dev 松山が務めた。


左から、水野氏・Ran氏・安留氏・寺田

トピック1『What is the hard things of the open innovation activities in FinTech industry?』


松山:ではまずはじめに、FinTech領域でオープンイノベーションを実施する上で困難なことは何かという点について、富士通の安留さんご意見をお願いします。


安留氏:私は会社の立場ではなく個人の立場から見解を述べさせていただきます。

一般的には適正や組織の壁が課題だと言われますが、私はやる気が重要だと思っています。「もっと生活を良くしたい」というような意欲が大切であると感じます。

現在の日本は世の中全体として既得権に甘えているのではないかと。日本という国は極端に言えば進歩がなくても生きていける環境にあります。キャッシュレス化が進んでいる国の多くは、もっとより良くしたいという向上心が日本よりも強いのだと思います。


松山:ありがとうございます。では、同じくMagenta Venture PartnersのRanさんお願いします。


Ran氏: スタートアップが大企業、例えば金融機関と仕事をする時、大企業の検討期間は長くなりがちであるためPOC(Proof of Concept)の後に何を行うかなど次のアクションアイテムを明確にして間を空けずに取組を進めることが重要だと思います。

水野氏、Ran氏

また、サイバーセキュリティの領域に関しては、銀行側に専門のリソースがあまり無いことならびにGDPR(General Data Protection Regulation:EUの一般データ保護規則)等、法令や規制上のハードルを乗り越えなければならず、高い確率で思い通りに進まないことも考慮に入れて活動せねばなりません。


水野氏:Ranのコメントの通り難しさがあるためイスラエルのスタートアップの中では主にファイナンス面が盤石な企業が日本に進出してきていますが、ノウハウが溜まることにより上記リスクを乗り越えて今後FinTech分野でより多くのスタートアップの日本への進出に期待しています。


松山:ありがとうございます。では、寺田さんはイスラエルのキャッシュレス事情も含めてお答えいただけますか?


寺田:そうですね、まずイスラエルのキャッシュレス事情ですが、基本的にはクレジットカードがメインで、ITが盛んなのでQRコード等使われていると思いきや、VisaとMaster Cardが一番シェアが多いと思います。


イスラエルのスタートアップについて言及すると、個人間送金では『PayBox』というサービスが有名です。友人と簡単に割り勘ができたり、プレゼントを一緒に買ったりできます。 また、商店で利用できるようなサービスでは『Colu』というブロックチェーンを利用した決済アプリケーションがあります。Coluはデバイスのアプリから金額を入力するだけで決済を完了することが可能です。ブロックチェーン技術の持つトランザクションに時間がかかるという課題に対して、決済部分はオフチェーンで実施したのちにイーサリアムに書き込むということを行い、独自の地域通貨を作るというような取り組みをしています。現在UKで実証実験を行なっている段階です。 あと、バスに乗る際に利用できる『HopOn』というサービスもあります。こちらはQRコードを利用して決済ができるというもので徐々に浸透しつつありますが、それ以外の決済手段もあるので全員が使っているというわけではありません。

安留氏、寺田

オープンイノベーションに関しては、大企業とスタートアップの「人」と「組織」の違いが必ず存在するので、その溝を埋める仲介者が必要だと思います。具体的には、大企業側の出島のような形で取り組む社長直下の組織を作る、あるいは決裁者自らプロジェクトに参画するというようなやり方があると思います。

特にイスラエルと日本のFinTech領域でのオープンイノベーションというような場合、現地のネットワークが重要なので、現地の知見を持った人 、弊社やMagenta Venture Partners等を挟むことは一つの成功につながる要因と言えます。また、組織内のシステムに課題があるケースが多いので、そのあたりの知見がある人間を間に挟むということも鍵になります。


松山:ありがとうございます。安留さんにお伺いしたいのですが、中国をはじめFinTechが成長している国々は、規制のなさや政府の支援が関係しているのではないかと思うのですが、どうお考えでしょうか?


安留氏:そうですね、規制については国によって違うので一概にどうということは言えませんが、特にアジアは平均年齢が比較的若いためテクノロジーに対する抵抗感が少ないので広まりやすいと感じます。日常生活を改善するようなサービスが生まれてくるので、今後も面白いサービスが出てくる可能性が高いと思います。 日本は規制などの壁が多く、また先ほども申し上げた通り既得権があるので、そこが課題だと思います。


参加者からの質問『北欧のキャッシュレスが進んでいる背景にあるものは何か? 日本は現金主義と感じるがなぜなのか?』


松山:ご質問ありがとうございます。では安留さんにお答えいただきます。


安留氏:歴史・文化・国民性によると感じています。北欧はクレジットカードの歴史が長いのですが、その理由として言われているのは、寒いので銀行に行くのが面倒だからというものです。また、国の政策として決済手数料がとても安くなっています。その結果、今ではカードでの決済がかなり定着しています。 一方日本が現金主義である理由は、日本は現金での生活が暮らしやすいからであると考えられます。インドネシアのようにインフレが激しい国では、飲み会をするのにも多くの札束が必要となり、非効率なのです。日本で今後キャッシュレス化を進めていくには、そういった現在の環境を変えていくことが必要だと思います。


松山:北欧のキャッシュレス化の背景が寒いからというのは僕らにはあまりない感覚でとても面白いですね。では次の質問に参ります。


トピック2『What do you think the future of FinTech?』


寺田:ポケットから財布やデバイスを取り出して行う決済から、体にチップを埋め込んだり、顔認証でIDと紐づけたりというような、もっとスマートな決済サービスに進化していくとグローバルな動きを見ていて思います。日本の空港で顔認証を用いてパスポートを確認するというシステムは実用化されているので、技術的にも既に可能です。 また、SNSの情報などを集約して個人の与信等をより正確に見分けるAIのシステムなどが生まれ、今まで人力で行われてきた仕事が自動化されていくと感じています。


松山:確かに、決済のストレスをフリーにしていくのは簡単だと思うのですが、認証の部分についても重要になってくると思います。


Ran氏:新たな資産クラスも開拓され投資を呼び込んでおり、特にWealth Managementと言われる富や財産の管理、運用に関するFinTechに興味を持っています。また、決済の分野についても変化があり、配車サービス業者や紹介されたRapyd社のようなその他のスタートアップが国際間の取引含め変化をもたらしておりこれらも非常に興味深いと考えております。


水野氏:Ranの発言に付け加えると、 不利な状況でも工夫して乗り越えようとするのがイスラエル人のメンタリティです。例えばルールは変えるもの、何でも交渉可能で、自分たちは何かできるという考え方を持っており、今後もFinTechに限らず画期的なスタートアップが継続的に生まれると考えております。


イスラエルの街並み

また、 イスラエルは国内の市場がとても小さいので、設立初日からグローバル市場を目指しています。シリコンバレー等のスタートアップの様に国内に充分な規模の市場がある地域と比べると、イスラエルには日本企業と取り組みたいと考えているスタートアップも多いと思いますので、引き続き協業事例を多く作っていければと考えております。


松山:ありがとうございます。では最後に安留さんの考えるFinTechの未来について、お願いします。


安留氏:私は決済がないことがベストだと考えております。具体的にはAmazon Goなどはそれに近いと思いますが、「決済をしているという感覚がない」サービスが増えてくるのではないでしょうか。

しかし実際には、生体認証による決済は乗り越えるべき壁が多いため、日本ではまだ遠い未来ではないかと感じています。 銀行については、キャッシュレスの進展に比例して店舗とATMが減っていくと思います。そして、今とは違う形として銀行の役割がどんどん変わっていくのではないかと思います。例えば、相談をする場所だったりというような。


松山:なるほど、とても興味深いお話でした。それでは、そろそろお時間になりましたので、これにて終了とさせていただきます。

水野さん、Ranさん、安留さん、本日はお忙しい中ご登壇いただき有難うございました!



パネルディスカッション終了後には、登壇者の周りに多くの参加者が列を作り、FinTechに対する参加者の興味の高さをうかがい知ることができた。


次回のPitch Tokyoは「5G」をテーマに、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ様と共催で6月6日(木)に開催予定。 詳細・チケット申し込みはこちら



SNSアカウントはこちら|HPFacebookTwitterLinkedInEight


Aniwoのイベントから更なるイノベーションが創出されることを祈っている。


文責・編集:本間

10回の閲覧