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院卒者のキャリア論 ~AX Seminar #3 レポート前編~

9/10(火)に当社が開催するAX Seminarの第3回目として「院卒を活かした起業、グローバルに輝く研究者という選択」を実施。Zoomを使ったオンラインイベントで参加者は20人近くにのぼった。院卒者という枠組みで語られることの少ないキャリア論。今回は、様々なレイヤーの最前線で活躍する方々をお呼びし、それぞれのキャリアの方向性について語って頂いた。こちらは前編!

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今回の登壇者一覧

◆イベントタイムライン◆

20:00 開始

20:00-20:15 登壇者自己紹介

20:15-20:45 パネルディスカッション 

20:45-21:15 テーブル毎の座談会

21:15-21:30 全体質疑応答 

スタートアップにおけるアカデミアの知見の活用法、自身のキャリアなどについて多方面からディスカッション頂いた。

イベントの内容を前編後編の簡単なレポートにまとめ、お伝えする。(以下敬称略)

後編はこちら


1. MBA→起業 / 理系院在学中に起業 / 研究者 / 文系院→JICA→MBAと幅広い経歴の登壇者たち

寺田:こんにちは。私は手短に。京都大学MBA在学中にインターン2社を経て実務と座学の経験を積み、ベネッセに入りました。その後1年ちょっとで片道切符だけ買ってイスラエルに行き、そこで日本とイスラエルを繋げるビジネスを行うスタートアップを起業した形になります。

遠野:京都大学に入学し、元々の専攻は化学でした。その後より社会に近い応用領域に興味を持ち、京都大学大学院の医工連携のリーディングプログラムに進みました。その後ディープラーニングの会社を2016年に立ち上げ、3年弱で京セラグループに売却をしました。それが2019年の初頭になります。

 そして昨年からPlasmaという会社を立ち上げました。一時期ニュースにも出ていたと思うのですが 「月20万円を払う代わりに家に監視カメラを置かせてもらう社会実験 “Exograph”」を行なったりしていました。

 自分自身は技術が好きなのですが、大学時代全然違う化学の専攻をしていたり在学中に起業をしていた部分があるので、同じようなキャリアの人がいればお話できればと思っています。よろしくお願いします。

池上:皆さんこんにちは。私は京都大学法学部を出て、その後同じ京大の公共政策大学院に行き、修士号を取りました。そして5年間JICAでイラクやエジプトといった中東向けの国際協力を行なっていて、地下鉄や下水処理場の建設といったハードなインフラ支援をしたり、キャリア支援を行なっていました。

 そこでプライベートセクターの方がやれることが大きいとエジプト滞在中に感じ、ケンブリッジでMBAを取得して、在学中にGoogleやアフリカでスタートアップ支援をしているDouble Feather Partnersというスタートアップでインターンを行なっていました。

 そして今はSoftBank RoboticsでAI清掃ロボットをグローバルに展開しています。

2. それぞれの、大学院時代の思い

ー大学院時代はどのようなキャリアイメージを抱いていたのですか?


寺田:そもそも小学生の頃から起業しようと思っていたのですが、これまで経営のことなどを体系的に学ぶ機会が少なかったため、MBAに行こうと思いました。京大は座学とインターンシップも推奨していたので、在学中に2社でインターンをしていました。

 1社がGLMという電気自動車の会社で、今香港のファンドに売却をした会社なのですが、当時まだメンバーが5名程だった際に入れて頂き、マーケティングや営業をやらせて頂きました。その後スローガンという人材会社の京都メンバー2人目(1名社員)として京都支社の立ち上げを経験しました。

 軸としては起業したい思いがあり、理論と実務を両方経験できた期間であったのが大学院時代です。その後ベネッセに入社し、3年程経験を積む予定でしたが結果的に1年3ヶ月ほどで辞めてイスラエルで起業したという経緯です。

 MBAでは”イノベーションのジレンマ”や、”大企業病”などがよく言われる話なのですが、実際に働いてみてまさにそうだと実感しました。予算管理や、官僚制で意思決定が遅い、といったところを実際に体験したのは良かった部分でありました。もちろん企業理念に共感して入社した素晴らしい会社ですし、大企業ならではの良い部分もあり非常に貴重な経験をさせてもらったことは感謝しています。

遠野:僕の大学院はリーディングプログラムという修士から博士まで月20万円貰えるプログラムに入れていたので、初めは博士取る気満々でした。理由は、小さい頃の夢が発明おじさんのようなもので、ラボにつきっきりでもいつか世の中に役立つものを生み出したい、という思いがあったからです。

 でも実際ラボに入ってみると、あくまでも科研費やその研究室の取り組み内容ベースで研究できる領域が決まっており、本当の意味で自由にやりたいことがやれる訳ではないという感覚を抱きました。まぁこれは当たり前のことであって、特に非難させることではないのですが、自分はそこに違和感を思えてしまいました。そこで”発明おじさん”になりたい自分の選択肢として、アカデミアではない、という結論に至りました。

 コンビニバイトでも何でもして自分で稼いで「やりたいことは、自分のお金でやろう!」と考えるようになり、そこからプログラミングなどを本格的に学び始めました。そこから起業の道に進んでいきました。M2の5月に決心して、そこから休学して中退した経緯です。

池上:子供の頃から「不平等のない世界を作りたい、格差のない世界を作りたい」との思いがずっとありました。特に僕が子供の頃は東南アジアがまだ貧しく、旅先でストリートチルドレンがいたのを目の当たりにした際、生まれ変わって自分がそのような環境に置かれるのはいやだ、という思いが湧き起こりました。

 なので、日本の大学時代は世界銀行や国連に行き、緒方貞子さんのような形で世界を変えてやるんだ、と考えていました。その為のキャリアとして外務省や外資系のコンサル・投資銀行なども見ていたのですが、ご縁があったJICAに入社しました。

 でも実際今、”国際協力の内容”は変わっていないのですが、”社会”がめまぐるしく変わってきていて。例えばエジプトとかは僕が駐在している間プロジェクトが社会を変えたとは言い難い状況だったんですけれども、Uberとかがすごい勢いで、3年で10万人くらいドライバー雇って、中所得層みんな使ってる、みたいに劇的な変化をもたらしていました。

 僕は(JICAで)交通担当だったんですが、圧倒的に(Uberのようなスタートアップが社会を)変えていっているっていうのが今世界各地で起きていて。パブリックセクターでずっとやっていてもダメだな、とそこで強く実感し、MBAに行きました。

 MBAでは、テクノロジーやスタートアップが世界を変えていくんだと感じていたので、まずはGoogleやMicrosoftといったようなビッグテックに入ってその中で会社のリソース使って社会を変えていったら面白いと思っていました。


ー御三方ともそれぞれ根底の思いがありつつ、大企業や大学院、JICAといった環境に入ってから自身の思いとのミスマッチ、兼ね合いを模索していったようなキャリアルートだったんですね。

3. 研究者のキャリアパスとは

*途中参加の田坂さん登場

田坂:僕は完全にビジネスは関係なく研究畑を歩いてきた人間です。京都大学で農学部で学部時代はガンの研究をやっていました。

 チュニジアの植物抽出物をガン細胞にふりかけてガンが死ぬか、という研究です。結果としては全然死ななかったのですが。そして脳にいこう、と思い神経科学の方で京都大学の生命科学研究科の方に研究室を移しました。

 そこでは「神経細胞の突起がどのように伸びていくか」という、人間丸い細胞が脳から手や足に突起を伸ばして接続していくわけですが、それがどのように伸びていくかという研究をやりました。

 それも5年間やりましたがこれもちゃうな、ということで。形態学ではなくもっと機能的な分野にいこうと思い、学位を取った後ヘブライ大で「母親になったら、どのように子供の泣き声への反応性が変わるか」というのを大脳皮質聴覚野の中の情報処理回路を6年半研究していました。最近日本に帰ってきて理研で研究も行っている形です。

4. 実際にやってみて分かることの違い


ー池上さんは、ビッグテックに入ってみて自身の思いとの違いは感じたことはあるのですか?

池上:良し悪しは両方あったと思います。Googleはソーシャルインパクト専門部隊がサンフランシスコにあるので、その部署に入れたら非常に面白いだろうなと思います。でもそこに至るまでに多分天才性が必要だったり、そこまでの道筋は単純なものではないとは感じました。


ー遠野さんは、ラボ内で自分のやりたいことがその研究室の分野外だった場合に研究費を使うことが出来ないジレンマがあったと思うのですが、起業して、営業先が大企業だった場合にも同様に稟議に時間がかかる場面は多々あると考えています。そのケースではご自身のジレンマ的感じ方は異なるのですか?

遠野:結論から言うと違います。例えば大学組織になるとポジション(勤め先)を変えたくても希望の枠がなければ自発的に動くことは難しいですし、研究内容も所属する研究室の分野から大きく外れることは難しい。しかし、会社だとA社、B社、C社と選択肢が増え、こちらからもお客様を選べる、と言ったら失礼ですが、少なくともその権利は両者に与えられています。

それは大きな違いですね。

 一方起業=自由なのか、というとそうではありません。起業後の早い段階でVCを入れた場合には”教授にお金を出して貰ってやっている研究”と同様の構図になることもありますし、そもそも稼げなければやりたいことをやることはアカデミアよりも難しい。

5. まとめ

 前半は登壇者の方々の大学院時代からのキャリアパスと背景にあるそれぞれの思いについて伺った。監視実験や中東のインフラ整備、はたまた母性の研究、イスラエルで起業など行ってきた経験がそれぞれ個性的な中、しっかりと根底に思いがあり、それらの行動に繋がっていることが分かった。大学院を経て、しっかりと10年程キャリアを歩んでおられる方々のキャリアの裏側を聞く機会はなかなかに貴重ではなかろうか?

 次回は、後編として実際に大学院時代の研究がビジネスに役立つのか、アカデミアの可能性についてお送りする。また遠野さんの事業売却の裏話や田坂さんに聞く研究職に向いている人は誰か、といった内容もお送りする。

 後編も熟読必須!引き続きお楽しみ下さい。

>後編はこちら

次回のAX Seminarは10月28日に『IPOに強い税理士が語るIPO攻略法』をテーマに開催します。金融業界志望者は必見です!

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Aniwoのイベントから更なるイノベーションが創出されることを祈っています。

文章:伊藤