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AI Weekに参加して感じたAI研究の成果とビジネスの可能性

11月17日から21日の5日間、イスラエルの商都テルアビブにあるテルアビブ大学でAI Weekが開催された。
AI Weekとは、世界から2,000人以上の研究者やデータサイエンティストが参加しAI分野の最先端の知見を共有する国際的なカンファレンスである。
17日は全日ワークショップデー、18日、19日の2日間がイベントのメインでゲストスピーカーによるセッション、20日、21日の最後2日間はダイヤモンドスポンサーであるインテルのオフィスにてハッカソンという流れであった。
残念ながら全てのプログラムへの参加は叶わなかったが、参加したレクチャーの中で個人的に興味深かったテーマについて2つ共有できればと思う。

テーマ1. ヨシュア・ベンジオ教授のキーノートスピーチ
1つ目は ヨシュア・ベンジオ教授 (Prof. Yoshua Bengio) のキーノートスピーチの内容だ。教授はコンピューターサイエンス分野のノーベル賞として知られる「チューリング賞 (2018 ACM A.M. Turing Award) 」を受賞し、ディープラーニングのパイオニア的存在と言われている。
今回のスピーチの内容は "Deep Learning for Higher-Level Cognition" 。
現状ディープラーニングは、「無意識的・非言語領域」においては優れているが、かつてのAIが目指していた「意識的・言語的領域」ではまだパフォーマンスを発揮していないという。その「意識的・言語的領域」でディープラーニングが活用できるようにするためのアプローチについてレクチャーで語った。
教授は「意識的・言語的領域」でディープラーニングが活用できるようにするために様々な研究をしており、その中の一つのアプローチが人間で言うところの『想像力』を持たせる研究だと言う。既に学習済みのデータに近しい新規のデータを得た場合、その結果がどうなるか、予測ができるようになるかという研究だ。データを小さな情報データに分け、その一部だけを置き換えた時に、保持している情報から予測して、欠損したデータ部分を再生できるのではという仮説を立てて、予測の研究をしているそうだ。
言われてみれば、日々の生活において、我々は何かを予測して行動することが多い。しかし予測ができることと、正しい予測ができることには大きな違いがある。ディープラーニングが本当に「正しい予測」をマスターするにはまだまだ時間がかかりそうだ。
テーマ2. Facebookによる音声データ解析に関する報告
2つ目は、Facebookによる音声データ解析に関する報告だ。
彼らは音の要素データを抽出し、別の音データと組み合わせて全く新しい「音源」を作るという研究を行なっている。
例えばピアノで演奏した楽曲を、ヴァイオリン演奏に変えることができる。同様に女性が話した文章を、男性の声でアウトプットすることも可能となる。現段階では音程やトーンの変更はできず、あくまで音データの置き換えだけとのことだが、この技術を彼らがどのように自社サービスで利用していくのか、非常に気になるところだ。
他にも画像を高解像度で複製する技術や、ディープラーニングをベースとしたビデオの監視システムに関する報告など、ビジネスの可能性が感じられる内容も多くあった。

Startup Pavilionに関しては、出展企業が13社と小規模であったが、既にプロダクトローンチしている企業がほとんどであった。
意外にもメディカル系が13社中5社と最も多く、他には自動運転関連のサービスや、データ解析など多岐にわたっていた。
今回のAI Weekは、AI研究がどのように進められているか、そして今後その研究結果がビジネスをさらに加速させていくであろうことを改めて実感するいい機会となった。
記事:杉山知子