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砂漠の農業立国イスラエルに学ぶ 農業×テクノロジー | Pitch Tokyo -Israel Edition- #2 (2019-20)

最終更新: 2019年10月8日



イスラエルのイノベーション最新動向をお伝えするAniwoの旗艦イベント、Pitch Tokyo。2019-2020シーズンの第二回目となる今回のテーマはAgriTech。今回はJAグループの運営するイベントスペース『AgVenture Lab』にて開催したイベントのパネルディスカッションの様子をお伝えする。

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アグリテックAgriTech

IT(情報技術)の導入によって実現される革新的な農業。また、それに関連するビジネスやサービス。ドローンや自動運転農機の利用のほか、ビッグデータや人工知能を駆使して生産管理・収量予測などを行う試みなどがある。アグテック。スマート農業。

※出典=コトバンク



イベントでは日本のAgriTechを牽引する以下4名の有識者を招待し、パネルディスカッションを行った。



モデレーターはAniwo, Head of Japan 執行役員 事業開発担当 松山が務めた。

左から、荻野氏、流郷氏、西氏、坪井氏

(以下敬称略)


トピック1. 『現在、農産業で抱える大きな課題は何か』


松山:色々な問題があると思いますが、荻野さんはどう考えていますか?


荻野:私が考える課題は大きく3つありまして、1つ目は農業をすることで儲かるなど、魅力的なインセンティブがないと就労してくれる人がいないこと。

荻野氏

そして2つ目は日本の食料自給率が37%であり、イスラエルの90%と比べてかなり少なく、今後の国のリスクになり得ること。

3つ目は農業が環境にダメージを与えているということ。

これらは解決していかないといけないと考えています。


松山:なるほど。1つ目のインセンティブについて、例えば実際に農業従事者の年収が1,000万円となったら人は集まると思いますか?


西:年収が1,000万円あれば集まる気がします。私は農業の仕事内容は魅力的だと考えています。自然と触れ合う時間を過ごすことは、人間にとって本来あったものだと思うので。

西氏

実際私たちが進めている豊浦町でのプロジェクトに、都会勤めで少し疲れてしまった人が1ヶ月くらい農業をして体と心を休めるという福利厚生を販売している会社との取り組みの話もあったりして、農業をするということは人間にとって必要なのではないかと思っています。


荻野:そこで言うと最近は大学で農業サークルができていたり、少しずつ明るい兆しが見えてきていると思います。


松山:なるほど。坪井さんは日本の農産業が抱える課題にについてどうお考えですか?


坪井:僕は日本の農業は国が支えていると考えていて、国の支えがなくなると日本の農業は崩壊していくと思っています。

坪井氏

ビジネスの視点でいうと、流通側の企業しか儲かっておらず、生産側の企業は国からの委託事業と補助金で行なっているケースがほとんどなので、サステナブル(持続可能)じゃないなと。


先ほどの1,000万円のインセンティブの話で言うと、もし年収1,000万円貰えるとしたらそのインセンティブを目的に農業に参入する人は必ずいると思いますが、実際にやろうとしても多くの人がそこまで稼げていないので、国から残りの金額が貰える補助政策などが必要になると思います。そうすると、その1,000万円の報酬に対してどれくらいの大きさの農地を生産しなくてはならないかということも重要になってきて、その大きさの農地を耕せる生産体制を能力として持っていないと結局その政策はうまく回らないのかなという印象です。


松山:確かにそうですね。流郷さんはいかがですか?


流郷:私は、農産業の大きな課題はみなさんがそもそも課題を知らないことだと思います。

流郷氏

例えば環境への負荷が高まっていることや農業従事者が高齢化していることなど、ニュースでも少し取り上げられていますが、実際にどれくらい深刻な問題なのかということを感じていない人が多いという点が課題だなと思っています。


荻野:全くその通りだと思いますね。我々はJAグループを通して農家の方々から色々な声が上がってくるのですが、恥ずかしながら私自身、先ほど話した農業が環境にダメージを与えているということを認識したのは割と最近でして、そういった課題も広く知らないといけないなと。行政機関などはそういった課題がわかっているのかもしれませんが、もっと社会的に理解してもらうことが必要なことなんじゃないかなと思います。


坪井:失礼ながら、僕は逆の意見を持っています。例えばここでみなさんが農業の課題を知ったとして、何か行動を起こすとは思わないんですね。明確なインセンティブが働かないと人は動かないと思っているので、認知の問題ではないのかなと僕は思っています。


流郷:そうですね。ですが認知の問題ではないとはいえ、人はまず知らないと動かないという風に思います。私自身がそういった課題をみなさんに伝える人間であるので、みなさんが知った上でどう行動するかという点まで促すということが一つ私の役目だと思います。

荻野氏、流郷氏

農業への関心が薄い方は行動しないというのはもちろんあると思うのですが、地道にみなさんに伝えるということで少しずつ変わっていくということもあると考えています。結果としてほとんどの人は動かないかもしれませんが、伝わったある一定層が行動をすることで政治が動くことに繋がっていくことに私は期待しています。


松山:なるほど。坪井さんどうですか?


坪井:認知と行動は別のレイヤーで、認知のあと行動に移すまでの間に現在も様々な取り組みがありますが、それがうまく機能していないということが僕の中での課題です。

話す坪井氏

認知して行動に移すという間の感情を動かすきっかけは人それぞれ違っていて、例えば先ほどの出た「お金」というのは一つのファクターとして挙げられますが、他にも趣味的に農業をしたいと考えている人などもいると思います。

そういった人に農業を認知させた上で行動に移させる取り組みが今後もっと活発になっていく様子が僕には見えないなと感じています。


流郷:はい、すごくよくわかります。私が言いたいことも本質は同じです。

ただ伝え方を工夫することで行動を促すことも可能なんじゃないかなと思っています。

例えば「食」という言い方は身近に感じますが、「農業」というとすごく遠い話のように感じてしまいますよね。「農業を体験できます」と言われたとしても、多分私も行かないと思います。反対に「あなたが食べているのが無農薬野菜かどうかで環境に対する負荷は変わってきます」というような、みなさんにとってもっと身近な問題にしていくともっと興味を持ってもらえるというような感じです。


坪井:僕は農業の儲からないイメージを解決することが全てだと思うんですよね。

西氏、坪井氏

例えば、今は国の制度で無理なのですが、複数の農地を一つの農地にし、数人で代わりばんこで耕すということができれば、一人一人の負担が少なくなります。そうすると農業をやりたいという人も増えて、収益も安定していきます。そういう状況を作りたいです。


あと、流郷さんのおっしゃる「食」の観点で意見を述べると、固定観念の少ない小・中学生の食育に力を入れるべきだと思っています。


流郷:なるほど、そうですね!あと、私は母親の意識も変えたいと思います。

無農薬野菜は環境に優しくても経済的な理由で買えない、ということはあると思いますが、需要を増やすことによって農業をする人の考え方が変わっていくと思います。

たくさん話しましたが、結局問題がとても根深いので、色々な方が色々な方向性で伝えていかないといけないのかなという風に考えています。



トピック2. 『テクノロジーでどのような世界を目指したいか』


松山:ということで、先ほども話の中で少しありましたが、テクノロジーでどんな農業にしていきたいかということを聞いていきたいと思います。


荻野:テクノロジーで現在の農業が抱えるあらゆる課題を解決したいと考えています。

荻野氏、流郷氏

今回のテーマは農業ですが、実はJAグループは農業だけやっているわけではありません。「安心安全な食」や「高齢化で変わっていく地方の暮らし」といったことを、テクノロジーで支えていくことも同じく大事だと思っています。そういう取り組み自体が地方の経済を支え、それが農業を支えることに繋がります。

また農業は農業単独じゃなく、「ファイナンス」や「スマート農業」、「地方創生」、「食」などと結びつくことで生まれる相乗効果も考えながら我々はやっていきたいなと思っています。


西:私も「地方創生」というキーワードは重要だと考えています。

西氏

江戸時代はテクノロジーが存在していなかったですが、農村という集落の中で物事が回っていました。

私は今の世界でテクノロジーを用いて、小規模かもしれないけど一つのコミュニティがその中で循環していくような、人間的な暖かい空間を生み出す世界を目指していきたいと考えています。


坪井:僕はハードウェアとソフトウェアの連携が大事だと思います。弊社は衛星を使っていますが、他にもドローンやIoTなどのハードウェアがありますよね。

それらを一括化させようという取り組みがあるがことごとく失敗しているので、それをなんとかしたいです。

坪井氏

現在、各企業が農業用のIoTデバイスを作っていますが、そのデータをITリテラシーが低い多くの農家が活用できていないのが実態です。これを解消しないと、農水省が掲げる平成37年度までに「データ化する農業」が実現できないと思っています。

これを解決するために一つ可能性があるとしたら、エンドユーザーに対するアプリケーションのインターフェイスをもっとわかりやすくすることです。

それによりデータをどう活用できるかということを農家が理解し始めます。ハードウェアは良いものがたくさんできていると思っているので、連携においてはソフトウェア側が課題だと思います。


流郷:私たちが取り組んでいるテクノロジーは、自然界の摂理に対して人類の力である「選別交配」を組み合わせることです。

話す流郷氏

そのテクノロジーを用いて何をしたいかというと、分断されているサプライチェーンを繋げるということをしたいです。

現在、ゴミはゴミ、肥料は肥料、飼料は飼料で終わってしまっているのですが、「ゴミ」と「肥料」と「飼料」の間に私たちのテクノロジーが入ることによって、それを全て繋げることができます。

つまり、有機廃棄物を排出している人、肥料を使う人、飼料を使う人を繋ぎ合わせることでによって、社会インフラを徐々に変えていこうとしています。そうすることによって、私たちの目指す循環型農業が実現すると思っています。


松山:なるほど。とても興味深いお話でした。それでは、そろそろお時間になりましたので、これにて終了とさせていただきます。

荻野さん、流郷さん、西さん、坪井さん、本日はお忙しい中ご登壇いただき有難うございました!


(拍手)



次回のPitch Tokyoは10月23日にWeWorkアークヒルズサウスにて「DeepTech」をテーマに開催します。


チケットの購入はこちら | https://pt3deeptech2019.peatix.com/


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Aniwoのイベントから更なるイノベーションが創出されることを祈っている。


文責/編集:本間

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