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イスラエルの第一人者に聞く、大麻の医療分野における可能性



 世界で注目が集まる大麻(カンナビス)市場。Fortune Business Insightsによると、世界の市場規模は2026年までに$97.3Bにのぼり、2019年から2026年の年平均成長率は32.6%と予測されている。もちろんこれはブラック・マーケットでの取引を含まない合法市場に関する予測で、各国での医療用大麻合法化の流れを受けた市場予測となっている。


 注目を集める医療用大麻だが、医療用大麻の研究で先端を行く国は、アメリカでもカナダでもなく、なんとイスラエルなのである。


 実は現在注目されている「ハイ」にならない成分、カンナビジオール(通称、CBD)と「ハイ」になる成分、テトラヒドロカンナビノール(通称、THC)の分離、構造解明に初めて成功したのは、カナビスの父とも呼ばれるイスラエルの有機化学者であるラファエル・メコーラム教授(以下、教授)である。


ラファエル・メコーラム教授

 なんと今回、そのカナビスの父に実際に会って話を聞くことができた。カナビス研究についてインタビューしたいとメールを送ったところ、快く了承してくれたのだ。緊張しながら指定された時間に教授の研究室のドアを叩く。出てきた教授は今年で89歳とは思えないほどシャキッとしていて、暖かく研究室に招き入れてくれた。教授だからか、何となく校長先生の話を聞くような気分だ。


 「まず、私はカナビスの商業的な部分には関わっていないけどいいかな?」と教授から断りがあった。今回は教授の研究内容について伺いたくて来たので問題ないと伝えると、早速

教授がカナビスの研究を始めた経緯から教えてくれた。


 教授がカナビスの研究を始めたのは、決してマリファナ好きということではなく、天然物化学に興味があったことがきっかけだという。研究を開始したのは当時教授が所属していた、ワイツマン研究所。1960年当時は研究用のカナビスが手に入らず、レバノンからの密輸で押収されたカナビスを警察から譲ってもらい研究を行なっていたという。そして、それまで誰も成功したことがなかったTHCの抽出という偉業を成し遂げる。


 教授の研究に関して、THCとCBDの構造解明に関して注目されることが多いが、教授のこれまでの研究は大きく3つに分かれているという。

 一つ目は植物そのものの研究で、これがカナビスからのTHCとCBDの分離、構造解明に当たる研究。

 2つ目はTHC、CBDが体内に入った際の影響に関する研究で、カンナビノイド受容体であるアナンダマイドと2-AGの発見がこれに当たる。

 そして3つ目は、そのアナンダマイドと2-AGが脳に与える影響に関する研究。モルヒネやニコチン中毒の患者の薬としてCBDが利用されているのは、この3つ目の研究に関連している。CBDが脳に与える影響で、中毒症状がブロックされるのだ。


 そんな長年カナビス関連の研究を続けてきた教授に、カナビスの医療利用に関する見解を色々と伺ってみた。

Q:カナビスの医療利用に関してどう考えますか?


教授:THCは認可された薬です。癌やHIVなど、これまでの治療方法の場合、薬の副作用で苦しんでいた人が、副作用に苦しまなくて済んだり、痛みを軽減する効果があります。一方でCBDに関しては、30以上の症状に対する効果が見られると報告されていますが、アメリカでの実際の薬としての利用は、癲癇(てんかん)に限定されています。

何故かというとCBDの場合、具体的な投与量などに関してまだ不明な点が多く、確証が取れていないからで、まだまだ研究が必要です



Q:CBDがアレルギーにも効果がある可能性がある、という記事を見たのですが、いかがでしょうか?


教授:アレルギーに関しては、まだ分からない。効果があるかもしれないですね。



Q:現在利用されている薬と医療カナビスの異なる点は何ですか?


教授:患者ごとに症状を見て、細かく処方を変えなければいけない点です。処方箋に「カナビス」と書けばいいわけでなく、濃度や成分を細かく指定しなければならないので、その点は難しいですね。



Q:処方が難しいとのことですが、医療カナビス専門のドクターを育てる仕組みはまだ整っていないように思います。今後医療カナビスの普及には、ドクターの育成も必要ということでしょうか?


教授:イスラエルでは、選択科目の位置付けで、医療カナビスについて学ぶことはできますが、まだ制度としては整っていないので、教育システムの整備は必要です。患者ごとに、特定の成分量を処方できるようにしなければならないですからね。



Q:イスラエルでは医療カナビスが合法化されていますが、何か課題はありますか?


教授:医療用カナビスを必要な形状で手に入るようにすることが重要です。カナビスの品質は製造メーカーによって様々なので、安定して特定の成分量のカナビスを処方できるようにすることが重要です。



Q:日本など、まだ医療カナビスが解禁されていない国にとって、医療カナビス解禁にあたっての一番の障壁は何だと考えますか?


教授:カナビスは多くの国で違法ドラッグという扱いです。違法を合法に変えるのは容易ではありません。なので、どこまでを認めるかというルールの制定が課題だと思います



Q:イスラエルの法制度の制定に関して、教授は関わっているのですか?


教授:関わっていません。もちろん意見を求められればアドバイスはしますが。1日24時間しかないのに、法制度のことまでやっている時間なんてないですからね。



Q:最後に今後の教授の研究について教えてください


教授:現在は、アナンダマイドの研究をしています。アナンダマイドは体内で自動生成されるカンナビノイドです。この働きに注目し、少量でカンナビノイドと同じ働きをする物質がないかの研究を進めています。今の投与量の半分の投与量で済むものがあれば、みんな嬉しいですからね。



 教授は既に引退して第一線を退いたとのことだが、まだまだ研究に意欲的な様子がありありと伺えた。


 今回のインタビューを通して、医療カナビスの医療分野における可能性が予想以上に広域に及ぶこと、同時にその扱いの難しさを改めて感じることができた。


 今後の教授の研究の行方と医療カナビスに対する世界の動き、そして日本が医療カナビスの解禁にいつ踏み切るのか、引き続き注目していきたい。



インタビュー・記事:杉山知子

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