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イスラエルから始まるIoTが拓く未来 -後編- Pitch Tokyo #3 (2018–2019)IoT Event Report



イスラエルと東京を拠点にイノベーションプラットフォーム事業を展開するAniwo。その定期イベントPitch Tokyoでは、毎月トピックを変えてイスラエルスタートアップの紹介と専門家によるパネルディスカッションが行われている。2018年8月開催のPitch Tokyo #3 (2018-19)のテーマはIoT。本イベントレポート後編ではパネルディスカッションの様子をお届けしたい。

前編はこちら



スタートアップ紹介の後、有識者によるディスカッションが行われた。


登壇者プロフィール


岡島 康憲氏

DMM.make AKIBA エヴァンジェリスト、岩淵技術商事株式会社 執行役員自社製品開発以外にも、企業向けにハードウェアプロトタイピングやハードウェア商品企画の支援を行う。


廣澤 篤氏

アクセンチュア シニアプリンシパル 製造業、ハイテク産業を中心に、IT戦略・業務分析・システム構築のコンサルティングに従事。


天辰 健一氏

カマルク特定技術研究所株式会社(KAMARQ-X) 最高技術責任者(CTO) (株)東芝エネルギー事業本部にて電力システム開発に従事。独立し2011年からIoT/M2M事業を立ち上げる。


松本 理恵氏

元・在イスラエル日本国大使館経済担当 イスラエルに3年間駐在し、経済や企業、技術の分析担当者として活躍。ロボティクス分野に造詣が深い。

(以下敬称略)



今後注目のIoT領域は?


岡島:ネット技術が普及しIoTの定義がぼやけつつある現在、ハードウェアありきでIoTを語る企業も多いが、個人的には集まっているデータからコンテキストを抽出、応用する通信やソフトウェアなどの無形レイヤーが今後より深掘りされると感じています。

今回のPitchで言えばSoftilのような通信技術は今後重要になると考えられます。


廣澤:IoTというワードが使われはじめて5–6年目になりますが、劇的な生活の変化は感じられません。と言うのも、IoT対応製品は開発・販売されているものの、世に出てから、それらすべてが常時インターネットに繋がっているわけではないからです。

あと3年程度で完全ネット接続化され、デバイス管理のプラットフォーム、エッジコンピューティング分野など、更なる発展を期待しています。


左から廣澤氏、松本氏、天辰氏

天辰:この領域でビジネスをしている身として感じることは、技術自体の進化よりも適用範囲を広げる重要性です。日本の製造現場は10~20年以上前から485など、通信自体はできていました。

新しい技術よりも既存の分野をいかにITで置き換えていくかの領域がポイントになると考えています。


松本:学生時代にロボットを作っていた経験から振り返ると、センサーとアクチュエーターという構造は不変のまま、昔ロボットと呼ばれていた技術がIoTと呼ばれ始めている印象です。

個人的に今後はセンサー領域が伸びると考えています。実際に高機能センサーを開発するスタートアップが流行し始めています。

ソフトバンクが提携を発表したイスラエル企業のVayyarが開発するセンサーなどは興味深いです。


岡島:自分もAppの業界よりも技術的な要素で考えるのが好きなタイプなので、その点でいうとセンサーの需要が高まるという意見には同意です。

かつセンサー分野は日本が強みを発揮できる可能性が高いので、今後どんなセンサーが日本もしくは世界から生まれてくるのかは注目ですね。



日本がIoT領域で世界で戦っていくためには何が必要か?


世界と日本のギャップについて、厳しい意見が相次いだ

このテーマでは、日本企業の現状に厳しい意見が相次いだ。


廣澤:非常に難しい。まず企業が勇気を持って積極的に投資していくことが重要です。

現在、RFIDや画像解析を用いて個品管理の実証実験をやっています。技術的にモノのトラッキングは実現しつつあるが、RFIDタグが高価であるなど、ビジネス化の課題が多くあり、幅広い展開には至っていません。しかし、こういう課題は昔からあり、例えば数十年前のバーコードの導入も、当時の印刷技術では同様の課題はあったのではないかと想像できます。当時と同様に企業が協力して投資を始めるしかないでしょう。


天辰:ゼネコン構造を打破する必要があると思います。

特にソフトウェア部門において、技術者の90%はゼネコン構造下のクローズドな開発現場に囲われている。オープンイノベーションを起こそうにも現状では10%の人材でやりくりするしかないので難しい。

この産業構造を打破する必要があります。


松本:構造的な欠陥に関してはおっしゃる通りだと思います。

企業間の問題に加えて企業内の問題もあります。私は経産省で会計担当を2年勤めました。経産省は大手/ベンチャーなど様々な企業を補助していますが、せっかく企業内でリソースを持っているのにソリューション開発に繋がっていないケースもあるように見えます。例えば、企業の研究者が発表する論文を見ていると非常に高度な技術のタネはある。しかしその企業が発表するデモや製品を見ると、論文のレベルと大きく乖離している場合が多いのです。

この原因は、実装するためのテクノロジーは持っているものの、開発ルートに乗るまでに非常に長い時間がかかるからだと考えられます。

ここを解決しなければ世界には追いつけない。イスラエルは読んだ論文を翌日にはプロダクトに実装しようというマインドセット。このスピード感の差が大きなディスアドバンテージになっています。

人種や文化の違いと言われがちですが、どちらかといえば制度や、評価システムが邪魔をしているように感じています。


イスラエル駐在経験のある松本氏のスピーチ、左側は弊社松山と岡島氏

岡島:POC、仮説検証の場としての実証実験が足りていない。

これに賛同する日本企業も多いが、企業内ではPOCができない場合が多い。これは日本企業に失敗を許容する風土が根付いていないからです。PDCAのCが失敗理由のチェックでなく責任の所在探しになってしまう場合が多いように思えます。

この問題の解決には松本さんが仰ったように評価制度を変える必要があります。売上への貢献だけでなく、実験への貢献も同等に評価するべき。失敗→お取り潰しの流れで製品開発が遅れるのは非常にもったいない。


付け加えると、評価能力だけでなく言語化能力も不足している。

Twitter上で『本当にあったIT業界の怖い話』が流行っていますが、この手の問題が発生する源泉には自身の仕事の本質を伝える言語化能力が欠落しているという点があると思います。この状態でコミュニケーションに長ける欧米人と戦っていくのは無理。

大企業でもイノベーション推進室などの試みが始まっていますが、周りの部署から遊んでいると思われていたり、新たな価値観の仕事の意味がうまく伝わってない現状があります。

熱意を持っている人たちが、 いかに周りに熱意を伝播させ、説得するかが最近重要に思えるトピックですね。


松本:希望的な話をすると、日本企業が一から技術を作らずとも分業で生き残る道はある。

例えば基幹技術の開発以外に、最後の製品化の部分で活躍は可能に思えます。日本企業の強みである綺麗なUIであったり、製品の小型化技術であったり、先端技術を応用する形での製品開発は有力な生存戦略だと思います。

仮に一から作るなら、まずエンジニアの数を揃えるためにシニア層の技術者をうまく使っていく必要がある。 人口動態として若手世代が減っていく現在、シニア層にもエンジニアリングを担ってもらうことは、イノベーションを起こす上で重要です。

エンジニアという職業を評価する文化、システムをしっかりと作るべき。彼らにも活躍してもらうことで、日本がイノベーションを生み出していく道が見えてくると思います。



直後のQ&Aセッションでも多数の質問が出て、来場者のIoT活用、オープンイノベーションに対する熱量の高さを感じた。


以上でPitch Tokyo #3 イスラエル IoTスタートアップ特集Event Reportを終了させていただく。Pitch Tokyoから次のイノベーションが生まれることを願ってやまない。



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文責: Aniwo 服部

編集: Aniwo 黒須

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